妻に有責性があり婚姻費用分担義務が減額された事例
婚姻費用分担の請求者に、有責性が認められる場合には、判例上婚姻費用分担義務が否定もしくは相当程度減額される場合があります。
例えば、東京高等裁判所平成25年(ラ)第2081号婚姻費用分担審判に対する抗告事件においては、
「専らその支払を求める者に別居又は婚姻破綻の責任があるような場合、例えば、その者が不貞行為をして家を出るなどして、自ら夫婦の同居・協力等の義務(民法752条参照)を放棄しておきながら、他方の配偶者に対して扶助義務の履行として婚姻費用分担金の支払いを求めるのは信義則に照らして相当ではないこともある」(同判例P4) と述べられています。
また、私が、以前に事件処理を行った婚姻費用分担事件(東京家庭裁判所平成20年(家)第9148号婚姻費用の分担申立事件)においても、
「夫婦は互いに婚姻費用を分担するものとされているが(民法760条)、この分担の請求を不相当とさせるような事情が存在すると認められる場合には、この分担の請求は制限されるというべきである。」
とした上で、
「しかし、相手方は、申立人の監護を受けている長女との関係で申立人に対し婚姻費用を分担しなければならないから、この関係での婚姻費用を検討するとその金額は次の通り月額6万円となる。」
として、子供についての養育費相当額程度のみが、婚姻費用分担額として認められるなど減額された事例がありました。
この事例は、かなりひどく妻から夫への虐待行為がなされており、証拠上明白で、またそれにより別居せざるを得なくなったことが明らかであったことから裁判所も減額を認めたのだと思います。
このような減額の主張は、相手方に有責性がある場合に、当事務所としては積極的に行っておりますが、離婚裁判とは異なり、婚姻費用は迅速に決める必要性が高いこと、有責性と別居との関連性などから、なかなか裁判所は簡単に減額を認めようとはしない傾向があります。
最近の相談事例で、妻側の不貞行為事案も増えており、このようなケースにつき、妻や子供の生活費の問題があるとはいえ、法律が強制的に他の事案と同等の婚姻費用の支払い義務を認めるのは、私としても疑問がありますし、そのような立場に立ったご相談者・依頼者の方の感情としても納得できないことが多いです。
このようなケースについても、ぜひ当事務所にご相談ください。